海岸の石探しは、模様を探すだけじゃなくて、質感を探すという楽しみ方もあります。
この流紋岩は牛肉そっくりに見えたので「牛肉石」と名付けました。
赤身部分だけの石なら、海岸にたくさん転がっています。
こんなふうに白い脂身まで付いていたのが、この石のいいところ。
肉そっくりの石で世界一有名なのが、台北の故宮博物院にある「肉形石」です。
豚の角煮そっくりな石ですが、あれは着色と削りの加工が施されている石です。
それに比べてこの牛肉石は、新潟県糸魚川の海岸で拾ったままの姿、削っても着色もしていない自然石です。
作者は、地球と海ですね。
牛肉を知っていたのでしょうか。
6000万年前にできた流紋岩です。
まだ地中にあるときに、地下から上がってきた熱水の鉄分がしみ込んで赤くなったものです。
今まで紹介したおもしろ石の1~4もみんな鉄分がしみ込んで模様ができたものでしたが、牛肉石がこのような赤身肉模様なのは、この石の成分によるものです。
この石の成分が、鉄分が均一にしみ込みにくい成分だったためまだらにしか染み込まず、それでサシの入った牛肉の脂肪のような模様になったのです。
さらに、この牛肉石の最大のポイント、上にある脂身のような白い脂肪層は、なぜできたのでしょう。
それは、この石が、地中でまだ大きな塊だったころ、この石の赤身の方向から熱水があがってきて鉄分で石を染めていったのですが、この石の上の方、白い部分までは鉄分は染み込まず残ったため、白く残ったというわけです。
つまり、この石はそもそも鉄分がしみ込みにくい成分でできていたため、赤身模様と白身模様ができたというわけなのですね。
そして、鉄分の酸化が進んでいなかったので、鉄分が茶色くならず赤いまま、フレッシュな牛肉のような色になったというわけです。
石の質感が想像力をかきたててくれる。そんなおもしろい石が、海岸にはたくさん転がっているのです。
【これは海岸散策のススメです】
海風、波の音、潮のかおり、どこまでも広がる大海原と水平線・・・深~くリラックスしていると、足元にころがっている石の模様にナニカを見つけたりするのです。
それは、それまで頭の中で堅くスクラムを組んで固定化していた回路が、手をほどいてみんな思い思いにリラックスしている感じです。
そして、気持ちよく伸ばした手で、あたらしい相手と新鮮な気持ちで手をつなぎ直す・・・頭の中がそんなふうになっている感じがするのです。
何億とか何千万年のあいだに起こってきた地殻変動は、私たちの時間軸から見るとはるかに大きな地球の営みです。
その歴史が、手のひらにのるような小さな石に刻まれて、偶然おもしろい模様が生まれます。
そんなおもしろ石は、Imaginative stoneというか、The stone which excites imagination想像をかきたてる石で、奇跡の石Miraculous stoneでもあるのです。
海岸を散策しながら、地球46憶年、日本列島2000万年の歴史を感じてみるの、オススメです。
Hanapanda