滋味日日・・はなぱんだ の「いいこと ”お福わけ”」

"はなぱんだ”のパンダ・パンダ・パンダ

アゲハ夏型オス 図鑑には自然にいるときと同じ姿も載せてほしい

f:id:a31017:20180801184503j:plain 毎日毎日35度を超える暑さ。夕方、庭木に水をあげていると、毎年かならずやってくる、黒いカワラトンボと、このアゲハ。夏型のオス。もちろん毎年同じ個体がやってくるはずがなく、昨年とは違う個体なのだけど、まるで引き継ぎでもしているかのように、毎年必ずやってくる。
 地面から30センチくらいの高さにあるモミジの枝先にとまって休んでいる。翅を閉じたり、写真のようにゆっくり大きく開いたり。

 春先のほんわりしたアゲハと違って、夏のアゲハは、写真のように黒く濃くエキゾチックで複雑な模様をしている。
 両翅の丸い模様は、あきらかに目だ。
 大蛇の顔を模しているのがよくわかる。
 春型のほんわかした模様では、敵が多い夏の過酷なサバイバルを生き抜けない。
 だから夏型の模様は、春とはすっかり様変わりしたエキゾチックで迫力のある模様に変わるのではないかと思う。
 昆虫は、ただ近くで長くじっと見つめているだけで、さまざまなことに気づかせてくれる。
 それなのに、昆虫図鑑や標本ときたら、その昆虫が自然にいるときの姿をまったく無視して、前翅と後翅の模様がよくみえるよう、両翅が重ならないように、前翅を不自然に上方にもちあげて固定している。
 おかげで、昆虫図鑑や標本では、写真のようなアゲハが作りだす芸術的な大蛇顔の模様をそのままの出来栄えで見ることができない。
 自然にいるときと同じ姿をみせることで模様の所以を知ることができるのに、模様の細部の見分けに特化してしまい、木を見て森を見ずの展示方法だけなのはとても残念です。
 自然のなかで知恵を駆使して生き抜く小さな生き物の姿形の不思議と、その造形を授けた自然の妙は、私たちに自然の織り成す世界の豊かさをおしえてくれるから、やっぱり、自然のなかにいるときの姿も昆虫図鑑や標本は伝えてほしいと思うのです。
 ところで、アゲハ蝶を見るというのは、縁起がいい、いい知らせの予兆という言い伝えが世界各地にあります。天敵だらけの過酷な自然のなかを、独りふうわとわたってゆくアゲハの異次元の優雅さは、見るものをそれだけで豊かな気持ちにさせてくれるからではないかと思いました。